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下から真ん中に行くことでさえ怖いのに下からその上の上にある上に一気に行ってしまったらどうすればいいのだろう。知っていることから離れるのは寂しいし、知っている顔や場所から離れるのはすごく怖い。今のわたしは必死に脱皮しようとしている。これまでの思い出の中に生きようとするわたしと、この先にある見たことのない世界に進もうとするわたし。その狭間でプカプカと浮いている。思い出が新たな景色に塗りつぶされていくその過程をひたすら見るだけのわたし。不確かな世界だからこそ、この瞬間を大切にしたい。